劇場版 将棋ウォーズ 1 【対四段戦】

みなさまごきげんよう

 

最近記事にできそうな将棋が指せなかったり、負けて執筆モチベが無かったりで、毎日投稿していた将棋の記事を更新できていなかったが、今回から『劇場版 将棋ウォーズ』として復活してゆく。

これまでは一記事にその日指した3局の将棋を3局全て掲載していたが、劇場版では勝ち負け問わず内容の良いもの1局を詳細まで丁寧に初心者にもわかりやすいよう解説していく。

 

というわけで劇場版最初の対局だ。

 

 

  

 三間飛車居飛車

 将棋ウォーズ棋譜(4wai 四段 vs whiteswan 初段) https://kif-pona.heroz.jp/games/4wai-whiteswan-20190701_065924 #shogiwars

 

今回の戦型は相手が三間飛車、手前のこちらが居飛車となった。

 

三間飛車』とは

  • 飛車を左から3列目、角の隣まで動かして戦う戦法
  • 攻撃寄り、防御寄りどちらもこなせる
  • 飛車、角、桂馬、歩の連携が取りやすい
  • 良くも悪くも利用者が少ない

 

居飛車』とは

  • 飛車を最初の位置のまま戦う戦法
  • 攻撃の主導権を握りやすい
  • プロ棋士の多くがメインの戦法として利用する

 

 

序盤

初手〜12手目

以下の画像は開始12手目の局面。

この形の三間飛車を相手にすることが苦手なのは筆者だけではないはず。

 

上でも説明したが、画像だとよりわかりやすいだろう。

三間飛車は飛車、角、桂馬、歩の攻撃を一点に集めやすい。

そして、この形は互いの角が向き合っているため、いつ戦いの火蓋が切って落とされても不思議ではない。12手目から緊張状態なのだ。

 

得意でない人は早いうちに角が向かい合った状態を解消するか、三間飛車が狙っている地点の守りを増やせば持久戦へ持ち込める。

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↑奥が相手、手前が筆者である。

 

〜13手目

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相手の飛車が7六に浮いてきた。浮き飛車と呼ばれるものだ。

次の狙いとして、3四のこちらの歩を取りに来る狙いが有る。

序盤から駒をタダで取られることは損なのでこれを守る。

 

〜16手目

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八角成と角を取り、同銀と角を取られ、互いに角を取り合う。これを角交換と呼ぶ。損得のないやり取りなので交換と呼ぶ

互いに持ち駒に角を持ち合う為、角を打ち込まれることを注意しなければならない。

銀を2二に上がり、3四の歩取りの対策をする。

 

〜27手目

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玉の緊急避難経路を作るため玉左上の2三の歩を動かした。

すると、相手が8六歩と歩を動かしてきた。(画像の赤丸

飛車と銀で突破してこようという狙いだ。

 

〜31手目

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相手の8六歩を同歩と取り、相手が同飛としてきた。互いの飛車が向き合う状態で、互いに飛車を取り合う飛車交換が可能だが、飛車を持ち駒にしたときに損なのはこちらだと考え、8五歩(青丸)と相手の飛車を追い返した。

 

飛車を持ち駒にした時にこちらが損だと考えたのは、金銀が自陣の左右にバランス良く配置してある相手に比べ、こちらは金銀が自陣の左側に偏っているため、飛車を自陣に打ち込まれやすいからだ。

 

〜32手目

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32手目、3三角打と持ち駒の角を打った。

これは7七の銀が動けば相手の飛車が取れるという狙いだ。

 

〜33手目

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その狙いに対し、相手の方は6六角打と角を壁にしてきた。

 

 

中盤

〜37手目

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壁になった6六角を同角と取り、同歩と取り返され、こちらが再び3三角と打ち、今度は相手が5六角と打ってきた図だ。

こちらの角は相変わらず相手の飛車を睨んでいる。

相手の角はこちらの飛車の眼の前に8三歩打(赤丸)と歩を打つ狙いがある。

 

〜38手目

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相手の角の狙いが厳しいため、7四歩(青丸)と歩を動かし角の道に壁を作る。

同歩と取られそうだが、取られたら8四飛と浮き飛車にし取り返しにいくと同時に飛車の目の前に歩を打たれなくする狙いだ。

 

相手の角の狙いが厳しくこちらの形勢が少し悪いと考えて、少し捻って出した手なので好手かどうかは自信がない。

 

〜42手目

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実戦では、同歩と取られ、8四飛と浮き飛車にし、7四銀(青丸)で歩を取り返すことに成功した。

その一方で、相手に3四角(赤丸)とまた別の場所の歩を取られた。

 

こちらの飛車先(飛車の前方のこと)が安定し、右の桂馬も使えるようになり、相手の角もそっぽへ行ったので、ここの形勢は互角だと思う。

 

〜46手目

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相手が4五角(赤丸)と角を動かし7二に成りこもうとしたので銀を6三に動かし壁にして防いだ。一応防げているが、将来的に角で銀を取られる危険性をはらむ。

相手が6七金と金銀を盛り上げてくるのに対し、こちらは方針通り7三桂(青丸)と桂馬を前進させた。どちらもやっていることは飛車を中心とした右半分の勢力争いだ。

 

 〜47手目

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47手目、7六銀(赤丸右上)と銀で飛車を圧迫しにきた。

次に7五銀と飛車を取りに来る手が有る。(赤矢印右

この手に対し、飛車を下に逃がすと、7四歩打(赤丸右下)とこちらの桂馬の前に歩を打たれ桂馬が取られる狙いが有る。

また、飛車を一番下に逃がすと、前述したようように6三角成(青丸)と角で銀を取られ、同金と金で取り返す事ができるが、7二銀打と打たれる。この銀を打たれると、こちらの金か飛車のどちらかをタダで取られるため、形勢は敗勢となる。

 

〜50手目

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飛車が下に逃げられない事がわかったので、6五歩(青上矢印)と左に逃がすことにした。

この手は飛車を左へ逃がすための手だが、角が相手の飛車を狙いやすくなるという意味もある。1ターン1行動が基本の将棋において、複数の意味がある手は良い手だ。

 

こちらの6五歩に対し、7五銀(赤丸)と飛車を取りに来たので、前述通り4四飛と飛車を左へ逃した。

角の道を塞ぐ場所なので基本的には良くないが、相手の角を取れる場所でも有るため、逃げと攻撃両方の意味があり良い手だ。

 

〜54手目

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相手が5六角と角を逃した。

前述の通り、こちらは3三の角で相手の飛車を狙うことが一貫した方針なので、6六歩と歩を前進させたいが、相手の7五の銀が邪魔なので7四歩打(青丸右)と銀を動かしに行った。

それに対し、相手は8四銀(赤丸)と銀を動かした。次にこちらの桂馬が取られてしまうが、損得勘定で6六歩(青丸上)と歩を前進させた。

 

〜57手目 

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6六歩を同金と金で取られた。

これで角の道の壁になっているのは相手の金とこちらの飛車だけ。なので、6四飛(青丸)と飛車で金を取りに行く。

この一手で飛車と角の攻撃力が一気に増した。

相手の方は6七歩打(赤丸)と金を守る。

 

〜58手目

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それに対し、6六飛(青丸)と大胆に飛車を切っていく。

当然同歩と歩で飛車を取られる。

 

 〜60手目

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60手目、6六角(青丸)とついに角が前進する。

この角は右上に飛車取り、右下に銀取り、左上に角成りと3つもの狙いがある。

飛車は取られてしまったが、その対価にふさわしい働きだ。

 

〜61手目

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それに対し、相手の方は飛車を見捨て7三銀成(赤丸)と桂馬を取り、攻めを加速させた。次に6三成銀と銀を取りこちらの守りを手薄にする狙いがある。

 

 

終盤

〜67手目

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 当然こちらは8八角成(青丸)と角を成って飛車を取る。

それに対し、前述の通り相手は6三成銀と銀を取りこちらの守りを手薄にしてきた。

これに同金と金で銀を取り返すが、8二飛打(赤丸)と自陣に飛車を打ち込まれた。

これは王手なので、6二歩打と金底に歩を打ち壁を作るが、6四歩打という金取りの追撃が来る。

 

〜69手目

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将棋には『馬の守りは金銀3枚』という言葉がある。それだけ馬は強いのだ。

その言葉に従うよう、5五馬(青丸)と馬を動かした。

6三歩成と歩で金を取ったら、8二の龍を馬で取ることができる。

また、相手の玉を馬が直接睨んでおり、本丸を攻める狙いもある。

 

それに対し、相手は8一龍(赤丸右)と龍を逃した。

しかしこれはただ逃しただけでなく、 2三銀打(赤丸左)と銀を打つ手が有る。

同銀と銀をとると同角成と銀を取られ、同玉と馬を取って一件落着と思いきや、4一龍(赤丸左下)と、金を龍で取られる狙いが有る。

守りが全て無くなり、玉が裸になるため危険だ。

 

〜70手目

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が、一旦3六歩打(青丸)と打つ手がありそうだ。(無いかも知れないけど)

この歩を取ると5五の馬で玉を取ることができるので、この歩は取れない。

 

〜74手目

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これに対して4六銀打(赤丸)と馬の道に壁を作ってられた。

一旦3七歩と取り相手陣の形を崩す。同桂と取られたところで5六馬(青丸)と相手の角とこちらの馬を交換する。

角と馬の交換なので基本的には馬側が損な交換だが、相手の角もこちらの嫌な場所を睨んだ良い角だったのでまあまあな交換だと思う。

 

〜79手目

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先程の5六馬を同歩(赤◯右上)と取り返され、こちらは5四金と金を中央へ逃がす。

金を逃がすか捨てるかは悩みどころだった。金を見捨てれば一手を別の場所に使えるが、金を取られ、同時にと金を作られるデメリットがある。

このデメリットが大きいと考え、金を逃がすとともに、将来中央での金の活躍に望みを託した。

 

これに対し相手は猛攻を仕掛けてくる

3四桂打(赤◯中央)と持ち駒から銀取りの桂を打つ。

これを放置すれば銀が取られる上に4一(赤◯下)の金が8一の龍に取られる。そのため3三銀とかわす。

これに対し、2三角打(赤◯左)と角を打ち込まれる。

この角はタダで取ることができる。が、取ると4一(赤◯下)の金が8一の龍に取られるのだ。

押し売りの角を取らないともっとひどいことになるので、仕方なしに取る。

 

〜82手目

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2三玉と玉で押し売りの角を取る。

前述の通り4一龍(赤◯)と龍に金を取られる。しかも龍が自玉に近く危険だ。

しかし一応無事なことはわかっていた。

3二銀打(青◯)だ。持ち駒から銀を打ち龍を追い返す。

 

〜85手目

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3二銀が意外にも強固な守りだったので、相手は9一龍と龍を逃しつつ香車を持ち駒にする。

こちらは3四銀と目の上のたんこぶだった3四の桂馬を取り持ち駒にする。

そこで相手は先ほど持ち駒にしたばかりの3六香打(赤◯)と打ってきた。

銀取りかつ、玉を狙いにしており大変厳しい一手だ。

 

〜86手目

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と思われたが、良い手があった。

3五歩打(青◯)だ。

普通なら同香と取ることができ、無意味な一手だ。

しかし、なんとこの局面では同香と取ると相手が詰んでしまうのである。

将棋には『一歩千金』という格言があるが、まさにそのとおりだ。

 

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香車が居るところに3六桂打(青◯)と桂馬を打てば詰み筋だ。

3六桂打、1八玉、1七飛打、同玉、2八角打、2六玉、2五金打、同桂、同銀までの9手詰み。

そのためせっかく打った香車を動かすことが出来ない。

 

〜87手目

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ということで、相手の方も詰みを回避するため方針転換をしてきた。

4五金打(赤◯)。詰みは誤算だったのだろう。明らかに今までの方針とは異なる一手だ。

こちらにとっても今まで想定してきた方針とは異なる一手だったため、対処に悩む。

 

形勢は、相手のミスによりこちらが優勢になったと思う。正確に指すことができればこちらが勝利するはず、という感じだ。

 

〜93手目

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しかし正確に指すことは難しい。

駒がたくさんぶつかっているところでは、駒を取る取らないの選択肢が増える。

選択肢が増えると不正解の選択を選ぶ可能性も増える。

 

本譜では、相手の4五金打に対し、同金と取り、同銀と取られ、同銀と取り返し、同桂と取り返され、3六歩と相手の香車を取った。

目まぐるしい展開だ。正解だったかわからない。

それに対し、相手の方は3五金(赤◯)と打ってきた。

この金はこちらの玉を圧迫しつつ、相手の玉を守る万能な金だ。

 

〜94手目

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これに対してこちらは3四香打(青◯)と香車を打った。

これは金取りと相手の玉を狙いにした一手だ。先程相手に打たれた3六香打と同じ意味をもつ。互いにこの縦のラインに香車を設置することが良い手だと考えているのだ。

 

〜97手目 

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それに対し、相手は同金と金で香車を取ってきた。

当然同玉と応じ、玉でその金を取る。

そこで、相手は4六銀打(赤◯)と打ってきた。

この銀は次に3五香打とこちらの玉の頭に香車を突き刺す狙いと、相手の玉を守る万能な銀だ。少し前の3五金打と同じ意味だ。やはり四段ともなると二つの意味がある一手を次々と指す。

 

〜98手目 

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確かに次に3五香打とこちらの玉の頭に香車を突き刺す手は厳しいのだが、即時に詰むわけではない。

なので、こちらは次に相手を詰ます手を指し続ければ良いわけだ。

ということで8八飛打(青◯)と横から飛車で攻めていく。

互いの玉の上部で攻防戦が行われていたので、こちらも上部から行こうとも考えたのだが、いろいろ考えて横から攻めることにした。

上部は先程の4六銀もあり守りが堅いが、横は比較的手薄だ。

 

〜99手目

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満を持して3五香打(赤◯)と玉の頭に香車を突き刺してきた。

王手なので玉は逃げなければならないが、逃げれば銀が取られる。絶体絶命。

 

〜100手目

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逃げた。

逃げる場所は上下右と3方向あったが、あえて2五玉(青◯)と上へ逃げた。

一見、上は相手の駒が並んでいて危険そうだが、この瞬間は意外と安全で詰まないのである。

しかも、次にこの玉を攻めに使って相手の玉を詰ますことができるのだ。

普段守られるだけの玉を攻めに使えると気持ちがいい。

 

〜102手目

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相手の方も自玉の詰みを読み切り、形作りとして3二香成(赤◯)と銀を取ってきた。

 こちらは3七銀打(青◯) と銀を打ち相手玉を攻める。

8八の飛車が横にスーッと睨みを効かせており、3八の銀を動かしたら玉が取られるため、3八の銀は動かせない。

 

〜終局

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以上は投了図。

3八の銀が動かせないので4六の銀で取ってこられたが、同歩成(青◯)と歩で取り返す。やはり3八の銀は動かせないので同玉と玉で応じるしか無いが、以降は詰み筋ということで投了になりました。

 

 

あとがき 

5000字超、画像36枚ということで編集がめっちゃ大変でしたね。

読む方もめっちゃ大変だったことでしょう。

 

今回は赤青二色の丸や矢印で工夫してみました。どうでしたか。

赤矢印ばっかの画像の次は青矢印ばっか、みたいな。

ターンごとに攻守が入れ替わるということが視覚的にわかりやすかったと思います。

 

内容が良いものを選んで、編集も時間がかかるので次がいつになるかはわかりません。将棋はアクセス数も良くないので完全に自己満ですが、まあ自己満なのでまたそのうち書きます。

また次回。